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(2023/10/05 00:23:45時点 楽天市場調べ-詳細)
そこでは命すら簡単に奪われる――女性洞窟ダイバーの先駆者がいざなう「神秘の魔境」の深奥。
子供の頃から、未知なるものへの関心は強かった。
洞窟、秘境、謎の生物といったキーワードに何度心を躍らされたことか。
(大長編ドラえもん「のび太の大魔境」の「ヘビースモーカーズフォレスト」は未だに実在するのではないかと疑っている)
ここ数年は特に深海、そしてそこに住む生物にとても心を惹かれている。
そういうわけなので、「水中洞窟の探検」という謳い文句に一も二もなく飛びついた。
しかし本作は、単に水中洞窟の美しさを紹介するガイド本ではない。
読めば読むほど伝わってくるのは、その恐ろしさと、にもかかわらず取り憑かれたように挑み続ける狂気にも似た著者の精神だ。
実際、本作の中では何人ものダイバーの死が描写されている。
ついさっきまでは笑いながら話していた相手が、数時間後には物言わぬ冷たい躯になっているということが日常的に起こる世界なのだということを嫌というほど思い知らされる。
著者自身も幾度となく危険な目に会い、ダイバー人生を引退しなければならないかもというところまで追い詰められる。
にもかかわらず、彼女は今でも潜るのを止めていない。
そうまでしても彼女を惹きつけるものは何なのか、死のすぐ隣にはどんな景色が見えるのか、否応なくこちらの関心も掻き立てられる。
しかしそれを確かめるためには、己の命を掛けなければならない。
そこまで思い切ることのできない臆病な自分は、じっと頭を垂れて恥じ入るしかできないのだ。